(
2008/06/22)
文化祭の準備
「今泉(いまいずみ)さんと泉水(いずみ)さんは何をしてらっしゃるのかしら」
頬をひきつらせた高千穂が二人に声をかけた。顔を上げた今泉が優しく微笑む。「見てわからないかしら」一回言葉を切り、自分の手を見てから高千穂に視線を戻す。
「手をつないでるの」
とても嬉しそうに言うと口の前で人差し指を立てた。
「静かにしててね。泉水さんが寝てるから」
遠くでクラスメートが高千穂を呼んでいる。彼女は振り返り片手を上げた。
今戻るわ、と返したかったが、それを向こうに伝えるには声を張らなければならない。そんなことをすれば目の前にいる今泉に目で殺されてしまう。
もう一度今泉と泉水を見下ろし腰に手を当てた。
「文化祭の準備を手伝う気は?」
「あら、私たちは当日にふりふりのかわいい服を着て店番をしていればいいんでしょう?」
「ないのね。それじゃあそのまま二人で手をつないでてください」
「はぁい」
くすくすと笑う今泉の顔はキレイだ。高千穂は胸中でため息を吐き踵を返した。確かに二人が並んで店番をすればそれだけで客が集まるだろう。客寄せパンダだ。彼女たちもそれで構わないと言っている。
だけど準備を少し手伝うぐらいいいじゃない。口には出さないが、思わないわけがない。
クラスの半数以上は二人が店番をしてくれるだけでもいい、手伝わなくてもいい、そこにいるだけで目の保養になる、と思ってる。去年も一昨年の文化祭も、二人は準備を手伝わなかったし当日だって何もしなかった。
それに比べれば全然マシさ、と彼らはいうが、流行りにのってメイド喫茶をやるのだから彼女たちのメイド服姿が見れる、というのが本音だろう。
しかし全員が全員そう考えるわけではない。高千穂だってそうだし、敵意のこもった不満を感じている人だっている。
今泉と和泉は目立つ。目を引く。注目を集める。いい方向でならかまわないが、悪い方向の方が多い。
そのせいでクラスに不穏な空気が流れるのはイヤだ。クラス委員として許し難い。
そう思っても伝わらなければ意味がない。
頭痛い、というつぶやきはクラスメートの悲鳴にかき消された。ガムテープが切れたぐらいで騒がないでくれるかしら。長い長いため息を吐いて、それから声の主の元へ足を向けた。
「どうかなさったの?」
どうやら切れたのはガムテープじゃなくて両面テープだったようだ。
●●○
名前が似てる人たちが仲良くしてるのが好き。ずっとそういうのが書きたかったんだけど、これでよかったのだろうか。謎。もう少し書きたいなぁ。
頬をひきつらせた高千穂が二人に声をかけた。顔を上げた今泉が優しく微笑む。「見てわからないかしら」一回言葉を切り、自分の手を見てから高千穂に視線を戻す。
「手をつないでるの」
とても嬉しそうに言うと口の前で人差し指を立てた。
「静かにしててね。泉水さんが寝てるから」
遠くでクラスメートが高千穂を呼んでいる。彼女は振り返り片手を上げた。
今戻るわ、と返したかったが、それを向こうに伝えるには声を張らなければならない。そんなことをすれば目の前にいる今泉に目で殺されてしまう。
もう一度今泉と泉水を見下ろし腰に手を当てた。
「文化祭の準備を手伝う気は?」
「あら、私たちは当日にふりふりのかわいい服を着て店番をしていればいいんでしょう?」
「ないのね。それじゃあそのまま二人で手をつないでてください」
「はぁい」
くすくすと笑う今泉の顔はキレイだ。高千穂は胸中でため息を吐き踵を返した。確かに二人が並んで店番をすればそれだけで客が集まるだろう。客寄せパンダだ。彼女たちもそれで構わないと言っている。
だけど準備を少し手伝うぐらいいいじゃない。口には出さないが、思わないわけがない。
クラスの半数以上は二人が店番をしてくれるだけでもいい、手伝わなくてもいい、そこにいるだけで目の保養になる、と思ってる。去年も一昨年の文化祭も、二人は準備を手伝わなかったし当日だって何もしなかった。
それに比べれば全然マシさ、と彼らはいうが、流行りにのってメイド喫茶をやるのだから彼女たちのメイド服姿が見れる、というのが本音だろう。
しかし全員が全員そう考えるわけではない。高千穂だってそうだし、敵意のこもった不満を感じている人だっている。
今泉と和泉は目立つ。目を引く。注目を集める。いい方向でならかまわないが、悪い方向の方が多い。
そのせいでクラスに不穏な空気が流れるのはイヤだ。クラス委員として許し難い。
そう思っても伝わらなければ意味がない。
頭痛い、というつぶやきはクラスメートの悲鳴にかき消された。ガムテープが切れたぐらいで騒がないでくれるかしら。長い長いため息を吐いて、それから声の主の元へ足を向けた。
「どうかなさったの?」
どうやら切れたのはガムテープじゃなくて両面テープだったようだ。
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名前が似てる人たちが仲良くしてるのが好き。ずっとそういうのが書きたかったんだけど、これでよかったのだろうか。謎。もう少し書きたいなぁ。
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微笑むその唇の角度だとか、わずかに細められた瞳だとか、薄く色付いた頬だとか、そういうものすべて、好きだったのに。
口からこぼれる言葉は後悔や憤りや悲しみの気持ちばかりで、もう二度と彼女に伝えることができない愛の言葉はほんのわずかで。
どうして、とつぶやいても仕方がないのはわかっている。わかってはいるが、つぶやかずにはいられない。
止まらない涙を拭うことに疲れてしまった。流れ続ける涙に飽きてしまった。
「ああ、主よ」
人々が祈る姿を見て、あなたは何を思うのですか。
口からこぼれる言葉は後悔や憤りや悲しみの気持ちばかりで、もう二度と彼女に伝えることができない愛の言葉はほんのわずかで。
どうして、とつぶやいても仕方がないのはわかっている。わかってはいるが、つぶやかずにはいられない。
止まらない涙を拭うことに疲れてしまった。流れ続ける涙に飽きてしまった。
「ああ、主よ」
人々が祈る姿を見て、あなたは何を思うのですか。
(
2008/06/17)
猫と狼の起床
もぞり、と腕の中で動く気配がして目が覚めた。伸ばされた右腕はしびれていて、空いていた左手は猫の手にしっかりつかまれていた。
顔は上げずに目だけを動かす。さっきまで寝ていたはずの猫はぼさぼさになった髪の隙間からこちらを見ていた。
「おはよ」
声をかけたところで返事がないことはわかっていたが、それでもついクセでやってしまう。目つきの悪い猫は無言のまま顔をそらしやがった。いつだって思うけど、寝起きの猫ほどかわいくないものはない。
●●○
狼だってそんなに寝起きはよくないけど、猫に比べればマシです。
顔は上げずに目だけを動かす。さっきまで寝ていたはずの猫はぼさぼさになった髪の隙間からこちらを見ていた。
「おはよ」
声をかけたところで返事がないことはわかっていたが、それでもついクセでやってしまう。目つきの悪い猫は無言のまま顔をそらしやがった。いつだって思うけど、寝起きの猫ほどかわいくないものはない。
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狼だってそんなに寝起きはよくないけど、猫に比べればマシです。