「アンタが好きなのはあの人でしょ?」
降ってきたあきれ声に顔を上げる気力さえわかない。向かいのイスが引かれ、細い体が滑り込む。相変わらず薄いな、と考え、視線だけ動かす。
メニューを開いている手が見えて、次いで顔が現れた。閉じたメニューの上にひじを立て、三宮が稲葉の前に置かれているグラスを指差す。
「なに飲んでるの?」
「カフェラテ」
「じゃ、オレもそれ」
店員を呼び、カフェオレを注文する。違うじゃん、と突っ込む気さえ起きなかった。ただじっと三宮の手元を見る。
「なんでオレ呼んだの?」
「わかんない」
イスに座り直し、顔を上げる。ふうん、と鼻を鳴らした三宮は水を飲んだ。
沈黙の中、店員がカフェオレを置いていく。ストローで一口それを飲んだ三宮は、オレとラテってなにが違うんだっけ、とつぶやいた。
「で? ウィーン旅行の感想は?」
「最悪だよ」
「だろうねぇ。見ればわかる」
睨むと肩をすくめられた。なんでこの人に連絡したんだろ。少々の後悔。しかし、自分に勇気がなかったのが悪い。
稲葉はカフェラテを飲み、三宮を見る。ストローをくるくる回しながらほかの客を見ているようだ。人間観察中かな。同じように自分も観察されているのだろうか。
「あの人呼ばないの?」
唐突な言葉に息がつまった。一気に指先が冷たくなる。店内は暖房が効いていて、暑く感じていたというのに。
カフェラテに目を落とし、力なく首を横に振る。「なんで?」「だって」「呼べばいいじゃん」
三宮は意地悪だ。稲葉は下唇をかみ、三宮の興味が他へいくことを願う。ただ苦しいだけの沈黙があたりに広がる。
顔を上げることができないのは、三宮からの視線を一身に受けているからだ。観念したように稲葉が口を開く。三宮は首を傾げた。
「だって、小鳥遊さん、忙しいだろうし、仕事の邪魔したら悪いし、それに」
「それってさぁ、嫌われるのが怖いだけでしょ?」
稲葉の顔を三宮が覗き込む。その近さに、稲葉は目を丸くした。
「あの人、あんたのこと心配してたよ」
「え」
「カップラーメン15分待ったりしちゃうぐらい」
「なんだよそれ」
笑った。
三宮も笑う。口の端を上げて、いたずらっ子のような顔で。
テーブルにひじを立て、手のひらにあごを乗せた三宮が、「連絡してみなよ」テーブルの上の携帯を指差した。
黄色いその携帯が、いつも見ている触っている使っているものとは思えないほどよそよそしく感じ、稲葉は不安になった。
手を伸ばすだけで精一杯だ。
開いて、ボタンを操作するなど怖くて怖くて仕方ない。勇気がなかったから三宮に連絡した。それだって、30分を要した。
要件は30秒で終わったというのに。
「オレがしようか?」
「やだ」
「じゃあ早くしてよ。今日稽古あるから、いつまでもしょーしんのアンタに付き合ってらんないの」
「…………」
さ行の上から5番目に見える「智さん」の文字。手が震える。心臓が痛い。だって、こんな、昔からの付き合いとはいえ、頻繁に連絡をとるような関係ではなかった。一緒に飲みに行くようになったのだって、つい最近だ。
携帯をのぞき込んできた三宮が、稲葉の指の上から通話ボタンを押す。
アドレス帳から通話中の表示に画面が切り替わる。
手から、血の気がさっと引くのを感じた。
「耳に当てないと、無言電話になるんじゃなぁい?」
ニヤニヤと笑う三宮を睨みつけ、覚悟を決めて携帯を持ち上げる。耳に伝わるのはプルルル、という電子音。それから、
「潤くん?」
やわらかい声は耳元と、真後ろ頭上から聞こえた。それだけで、泣きたくなった。
----------------------------------------
なんもいえない第13弾。私が泣きたい。
降ってきたあきれ声に顔を上げる気力さえわかない。向かいのイスが引かれ、細い体が滑り込む。相変わらず薄いな、と考え、視線だけ動かす。
メニューを開いている手が見えて、次いで顔が現れた。閉じたメニューの上にひじを立て、三宮が稲葉の前に置かれているグラスを指差す。
「なに飲んでるの?」
「カフェラテ」
「じゃ、オレもそれ」
店員を呼び、カフェオレを注文する。違うじゃん、と突っ込む気さえ起きなかった。ただじっと三宮の手元を見る。
「なんでオレ呼んだの?」
「わかんない」
イスに座り直し、顔を上げる。ふうん、と鼻を鳴らした三宮は水を飲んだ。
沈黙の中、店員がカフェオレを置いていく。ストローで一口それを飲んだ三宮は、オレとラテってなにが違うんだっけ、とつぶやいた。
「で? ウィーン旅行の感想は?」
「最悪だよ」
「だろうねぇ。見ればわかる」
睨むと肩をすくめられた。なんでこの人に連絡したんだろ。少々の後悔。しかし、自分に勇気がなかったのが悪い。
稲葉はカフェラテを飲み、三宮を見る。ストローをくるくる回しながらほかの客を見ているようだ。人間観察中かな。同じように自分も観察されているのだろうか。
「あの人呼ばないの?」
唐突な言葉に息がつまった。一気に指先が冷たくなる。店内は暖房が効いていて、暑く感じていたというのに。
カフェラテに目を落とし、力なく首を横に振る。「なんで?」「だって」「呼べばいいじゃん」
三宮は意地悪だ。稲葉は下唇をかみ、三宮の興味が他へいくことを願う。ただ苦しいだけの沈黙があたりに広がる。
顔を上げることができないのは、三宮からの視線を一身に受けているからだ。観念したように稲葉が口を開く。三宮は首を傾げた。
「だって、小鳥遊さん、忙しいだろうし、仕事の邪魔したら悪いし、それに」
「それってさぁ、嫌われるのが怖いだけでしょ?」
稲葉の顔を三宮が覗き込む。その近さに、稲葉は目を丸くした。
「あの人、あんたのこと心配してたよ」
「え」
「カップラーメン15分待ったりしちゃうぐらい」
「なんだよそれ」
笑った。
三宮も笑う。口の端を上げて、いたずらっ子のような顔で。
テーブルにひじを立て、手のひらにあごを乗せた三宮が、「連絡してみなよ」テーブルの上の携帯を指差した。
黄色いその携帯が、いつも見ている触っている使っているものとは思えないほどよそよそしく感じ、稲葉は不安になった。
手を伸ばすだけで精一杯だ。
開いて、ボタンを操作するなど怖くて怖くて仕方ない。勇気がなかったから三宮に連絡した。それだって、30分を要した。
要件は30秒で終わったというのに。
「オレがしようか?」
「やだ」
「じゃあ早くしてよ。今日稽古あるから、いつまでもしょーしんのアンタに付き合ってらんないの」
「…………」
さ行の上から5番目に見える「智さん」の文字。手が震える。心臓が痛い。だって、こんな、昔からの付き合いとはいえ、頻繁に連絡をとるような関係ではなかった。一緒に飲みに行くようになったのだって、つい最近だ。
携帯をのぞき込んできた三宮が、稲葉の指の上から通話ボタンを押す。
アドレス帳から通話中の表示に画面が切り替わる。
手から、血の気がさっと引くのを感じた。
「耳に当てないと、無言電話になるんじゃなぁい?」
ニヤニヤと笑う三宮を睨みつけ、覚悟を決めて携帯を持ち上げる。耳に伝わるのはプルルル、という電子音。それから、
「潤くん?」
やわらかい声は耳元と、真後ろ頭上から聞こえた。それだけで、泣きたくなった。
----------------------------------------
なんもいえない第13弾。私が泣きたい。
PR
(
2009/04/07)
ナベとクロ
「え、ナベはそれを本気でいってんの?」
クロが目を丸くしている。あたしは頷き、ミルクティを口にした。ホットだったそれはだいぶ温くなっている。しょうがないか、朝買ったやつだし。
口の端にあんこをつけているクロに、仕草で伝える。指ですくいとり、舐めた。クロの爪はピカピカだ。定期的に磨いているそうで、その爪を見るたびに、女とはこうあるべきだと思う。思うだけでなんもしないんだけど。
「バイト先の人でしょ?」
「うん」
「大丈夫なの?」
「なにが」
「だから、その」
「気まずくないかってこと?」
うん、と上目遣いでうなずくクロを見て、私は少し悩んだ。昨日の今日だからあんまり深く考えてなかったけど、そうだよなぁ、明日シフトかぶってるわなぁ。
「だってさぁ、ええとなんだっけ」
「高瀬さん?」
「うん、高瀬さん彼女いるんでしょ?」
「そらもうべらぼうにかわいい恋人さんが」
そもそもそういう人を好きになるのが理解できない、と言いたげなクロの目を無視してあたしはもう一度ミルクティを飲む。最後まで飲み干したそれのキャップをしめ、首を傾けた。
クロの思うことは分かる。恋人がいる人を好きになるなんて、見込みがなさすぎる。例えばそれが破局寸前だとかだったら違うんだろうけど、そういうわけでもない。高瀬さんとその恋人さんは仲睦まじく、私は仕事中にノロケ話を聞いたり、たまに恋人さんが客として来店するのを見ている。そこいらの女よりよっぽどかわいい。
「まー、ほら、もしかしたらたまたまかもしれないし」
「たまたまでキスする?」
「んー、勢い?」
「信用していいの? そういう人を」
「悪い人じゃないんだけどねぇ」
「それは、そうかもしんないけど」
コーヒーの缶を手のひらで包み、くるくる回す。クロの納得がいかない様子を見て、あたしはますます現実味をなくしていた。
なんか、昨日のアレはあたしの妄想だったんじゃないかなぁ。
「そういえば私、高瀬さん見たことない」
しばらく沈黙があってから、クロがつぶやいた。ああ、と手を打ち、そういえば。と返す。
「明日シフトかぶってんでしょ?」
「うん」
「見に行ってもいい?」
「いいけど、高瀬さん来るの21時からだよ」
「行く行く。私もバイトあるから、その帰りに行く」
そうか、ついに来るか。
今までなんとなく会わせないようにしてたの、気づいたかな。クロは相変わらず缶をくるくる転がしている。あたしは宙を見る。
「高瀬さんかっこいいんでしょ?」
「うん。男らしさがにじみ出てる」
「楽しみだなぁ」
「でも、すごく女性らしい人だよ」
口と目を開けてクロが固まった。
あたしは笑う。はは。クロはやっぱかわいい。
思っていたのが伝わったのか、クロが缶から手を離しこめかみをおさえる。眉間にしわが寄った。
「ナベ?」
「なんでしょう」
「私それ初耳」
「うん、あたしも初めて言った」
「なん」
「なんとなく、言いづらかったから」
「いやいや言ってよ」
「そうだね」
「え、じゃあ高瀬さんの彼女って」
「彼女っていうか、彼氏ね」
「かれし」
あたし一度も彼女なんて言ってないよ、と意地悪く笑ったら、クロが睨んできた。
怖い怖い。でも、かわいい。
ふはは、と笑ったら、なんだか軽くなれた気がした。
私はずっと、クロに話したくて話したくて仕方なかったのかもしれない。
クロが目を丸くしている。あたしは頷き、ミルクティを口にした。ホットだったそれはだいぶ温くなっている。しょうがないか、朝買ったやつだし。
口の端にあんこをつけているクロに、仕草で伝える。指ですくいとり、舐めた。クロの爪はピカピカだ。定期的に磨いているそうで、その爪を見るたびに、女とはこうあるべきだと思う。思うだけでなんもしないんだけど。
「バイト先の人でしょ?」
「うん」
「大丈夫なの?」
「なにが」
「だから、その」
「気まずくないかってこと?」
うん、と上目遣いでうなずくクロを見て、私は少し悩んだ。昨日の今日だからあんまり深く考えてなかったけど、そうだよなぁ、明日シフトかぶってるわなぁ。
「だってさぁ、ええとなんだっけ」
「高瀬さん?」
「うん、高瀬さん彼女いるんでしょ?」
「そらもうべらぼうにかわいい恋人さんが」
そもそもそういう人を好きになるのが理解できない、と言いたげなクロの目を無視してあたしはもう一度ミルクティを飲む。最後まで飲み干したそれのキャップをしめ、首を傾けた。
クロの思うことは分かる。恋人がいる人を好きになるなんて、見込みがなさすぎる。例えばそれが破局寸前だとかだったら違うんだろうけど、そういうわけでもない。高瀬さんとその恋人さんは仲睦まじく、私は仕事中にノロケ話を聞いたり、たまに恋人さんが客として来店するのを見ている。そこいらの女よりよっぽどかわいい。
「まー、ほら、もしかしたらたまたまかもしれないし」
「たまたまでキスする?」
「んー、勢い?」
「信用していいの? そういう人を」
「悪い人じゃないんだけどねぇ」
「それは、そうかもしんないけど」
コーヒーの缶を手のひらで包み、くるくる回す。クロの納得がいかない様子を見て、あたしはますます現実味をなくしていた。
なんか、昨日のアレはあたしの妄想だったんじゃないかなぁ。
「そういえば私、高瀬さん見たことない」
しばらく沈黙があってから、クロがつぶやいた。ああ、と手を打ち、そういえば。と返す。
「明日シフトかぶってんでしょ?」
「うん」
「見に行ってもいい?」
「いいけど、高瀬さん来るの21時からだよ」
「行く行く。私もバイトあるから、その帰りに行く」
そうか、ついに来るか。
今までなんとなく会わせないようにしてたの、気づいたかな。クロは相変わらず缶をくるくる転がしている。あたしは宙を見る。
「高瀬さんかっこいいんでしょ?」
「うん。男らしさがにじみ出てる」
「楽しみだなぁ」
「でも、すごく女性らしい人だよ」
口と目を開けてクロが固まった。
あたしは笑う。はは。クロはやっぱかわいい。
思っていたのが伝わったのか、クロが缶から手を離しこめかみをおさえる。眉間にしわが寄った。
「ナベ?」
「なんでしょう」
「私それ初耳」
「うん、あたしも初めて言った」
「なん」
「なんとなく、言いづらかったから」
「いやいや言ってよ」
「そうだね」
「え、じゃあ高瀬さんの彼女って」
「彼女っていうか、彼氏ね」
「かれし」
あたし一度も彼女なんて言ってないよ、と意地悪く笑ったら、クロが睨んできた。
怖い怖い。でも、かわいい。
ふはは、と笑ったら、なんだか軽くなれた気がした。
私はずっと、クロに話したくて話したくて仕方なかったのかもしれない。
(
2009/04/02)
ガチとヒモ
「なにしてんの?」
コンビニ袋を手にぶら下げ、缶コーヒーを唇に当てた香取が近づいてきた。
圭一は微笑み、空に近い缶を左右に振り「お茶してるの」と答える。大きく口を開けて香取が笑う。「そりゃそうだな」
「で? なんかあった?」
隣りに座った香取が顔をのぞき込んでくる。わざとらしく首を傾げ、「なんかって?」「だって泣いたでしょ」「いやいや」「顔に書いてある」視線とともに顔をそらした。
ニヤニヤと笑う香取がコーヒーを飲み干す。黒目を輝かせ、圭一を見つめる。
「かわいいあの子にふられたんだ」
「……タカシなんて嫌いだ」
「ははっ」
ベンチの近くに設置されたゴミ入れに、香取が缶を投げるときれいな弧を描いて中に入った。タカシは器用なのに、どうして仕事してないんだろう。モテるから仕事する必要ないのかなぁ。圭一がいらない心配をしているのに気づいたのか、香取が「そういや」と口を開く。
わずかに首を傾けた圭一に、香取は笑う。からっとした、余分な水分を吸っていない笑顔で、目の下のひっかき傷を指差す。
「オレもふられた。さっき」
「え」
「傷心同士、仲良くやろうよ」
香取自身は笑っているが、自分も笑っていいのだろうか。しかし先ほど、香取も圭一に向かって笑った。だったら、と圭一は一拍置いてから笑う。
ふは、と吐き出した空気とともに、佐々木への恋心も吐き出せたかのような気持ちになった。
そんなカンタンに捨てられる気持ちだったのなら、さっきの涙はなんだったのだろう。
それでも、コンビニ袋からポテトチップスを取り出した香取に、ドキドキしてるのはウソじゃなかった。心理学にこういうのあったよな、と思いながらポテトチップスを口にする。
いつもより塩分多めに感じた。
*****
「悲しんでる相手に優しくすればどうのこうの」ってやつです^^よくあるよくある!
香取が「手切れ金」つって彼女からお金もらってるから、そのお金で飲みに行きなさい^^と思ってます。ついでに家をなくしたので圭一んちに上がり込みなさい^^b
そこでどうにかこうにかなるとは、思ってません。居着くのかなぁ。新しい家を見つけるのか、家の方から寄ってくるのか……。
ヒモ男、香取タカシ。
コンビニ袋を手にぶら下げ、缶コーヒーを唇に当てた香取が近づいてきた。
圭一は微笑み、空に近い缶を左右に振り「お茶してるの」と答える。大きく口を開けて香取が笑う。「そりゃそうだな」
「で? なんかあった?」
隣りに座った香取が顔をのぞき込んでくる。わざとらしく首を傾げ、「なんかって?」「だって泣いたでしょ」「いやいや」「顔に書いてある」視線とともに顔をそらした。
ニヤニヤと笑う香取がコーヒーを飲み干す。黒目を輝かせ、圭一を見つめる。
「かわいいあの子にふられたんだ」
「……タカシなんて嫌いだ」
「ははっ」
ベンチの近くに設置されたゴミ入れに、香取が缶を投げるときれいな弧を描いて中に入った。タカシは器用なのに、どうして仕事してないんだろう。モテるから仕事する必要ないのかなぁ。圭一がいらない心配をしているのに気づいたのか、香取が「そういや」と口を開く。
わずかに首を傾けた圭一に、香取は笑う。からっとした、余分な水分を吸っていない笑顔で、目の下のひっかき傷を指差す。
「オレもふられた。さっき」
「え」
「傷心同士、仲良くやろうよ」
香取自身は笑っているが、自分も笑っていいのだろうか。しかし先ほど、香取も圭一に向かって笑った。だったら、と圭一は一拍置いてから笑う。
ふは、と吐き出した空気とともに、佐々木への恋心も吐き出せたかのような気持ちになった。
そんなカンタンに捨てられる気持ちだったのなら、さっきの涙はなんだったのだろう。
それでも、コンビニ袋からポテトチップスを取り出した香取に、ドキドキしてるのはウソじゃなかった。心理学にこういうのあったよな、と思いながらポテトチップスを口にする。
いつもより塩分多めに感じた。
*****
「悲しんでる相手に優しくすればどうのこうの」ってやつです^^よくあるよくある!
香取が「手切れ金」つって彼女からお金もらってるから、そのお金で飲みに行きなさい^^と思ってます。ついでに家をなくしたので圭一んちに上がり込みなさい^^b
そこでどうにかこうにかなるとは、思ってません。居着くのかなぁ。新しい家を見つけるのか、家の方から寄ってくるのか……。
ヒモ男、香取タカシ。
(
2009/04/01)
ガチとノンケ
〔だってそれは好きだから〕
「けーちゃん、それ、本気?」
頬をひきつらせた佐々木に向かって頷くのはつらかったが、否定なんかしたくなかった。
この気持ちにウソはない。ただ、相手を見極めきれなかった自分を、どこかで気持ちがバレてしまった自分の脇の甘さを罵倒するだけだ。
佐々木は悪くない。
佐々木の反応はふつうだ。
これが世間一般の反応なのだ。
静かに首を縦に動かす大野を見て、佐々木が小さく「マジかよ……」と漏らす。
「ササく」
「いや、いいから」
素早く腕を伸ばされ、ストップをかけられた。
拒絶、嫌悪、侮蔑。目は口ほどにものを言う。表面を取り繕うともしない佐々木の顔には、口に出してない言葉が素直に書かれている。
伸ばそうとした手を下ろし、「ごめんね、迷惑だったよね」うなだれた圭一は「今まで、ずっとそういう目で見てたの?」佐々木の言葉に微笑みながら顔を上げ、口を開く。
「そうだよ。ずっと、会ったときからずっと気になってた。お花見したときは元気な人だなーぐらいだったけど、みんなでバーベキューしたとき好きになった。なんも気づいてないササくんが遊びに誘ってくれて嬉しかった。ずっとずっと、ササくんの××××を××××××にして××××泣かせたかった。ササくんがこっちの気なんて全くないの知ってたけど、それでも好きだった。バレなきゃいいやって思ってた。いつだってササくんを抱きたかった。ふわふわの頭を撫でたかった。その胸に飛び込めたらって思ってた」
口を挟めない佐々木が何か言いたそうな目をしていたが、圭一は気づかないフリで無視をした。「でも」一拍置いて、首を傾ける。ネックレスのチェーンが鎖骨をなぞる。
「もうおしまいだ。ごめんね、ありがとう。大好きです」
深く頭を下げ、圭一は踵を返す。
悲しくなんかない。戻れない道だ。もう女に興味が持てない。仕方ない。とっくの昔にあきらめた。
佐々木が相手では、例えば子どもが3人いる人妻を好きになるより望みがないのはわかっていた。わかっていたけど止められなかった。
夕暮れがまぶしい。
目から涙がこぼれる。傷つくのを覚悟して好きになったはずなのに、どうしてこんなにつらいのだろうか。
----------------------------------------
ガチホモとノンケとその他もろもろでなんかやればいいのに、とか言いながら書いたネタ。このあとガチは友達になぐさめられ、うっかりその人にときめきます。その友達は、何事も挑戦かな、とか少し思えばいい。口にはしないけど^^^
このガチ、ノンケの彼より周りにモテてるといいな^^^本人は興味ないから気づかないけど、ノンケはそんな彼を少し尊敬してればいい^q^
「けーちゃん、それ、本気?」
頬をひきつらせた佐々木に向かって頷くのはつらかったが、否定なんかしたくなかった。
この気持ちにウソはない。ただ、相手を見極めきれなかった自分を、どこかで気持ちがバレてしまった自分の脇の甘さを罵倒するだけだ。
佐々木は悪くない。
佐々木の反応はふつうだ。
これが世間一般の反応なのだ。
静かに首を縦に動かす大野を見て、佐々木が小さく「マジかよ……」と漏らす。
「ササく」
「いや、いいから」
素早く腕を伸ばされ、ストップをかけられた。
拒絶、嫌悪、侮蔑。目は口ほどにものを言う。表面を取り繕うともしない佐々木の顔には、口に出してない言葉が素直に書かれている。
伸ばそうとした手を下ろし、「ごめんね、迷惑だったよね」うなだれた圭一は「今まで、ずっとそういう目で見てたの?」佐々木の言葉に微笑みながら顔を上げ、口を開く。
「そうだよ。ずっと、会ったときからずっと気になってた。お花見したときは元気な人だなーぐらいだったけど、みんなでバーベキューしたとき好きになった。なんも気づいてないササくんが遊びに誘ってくれて嬉しかった。ずっとずっと、ササくんの××××を××××××にして××××泣かせたかった。ササくんがこっちの気なんて全くないの知ってたけど、それでも好きだった。バレなきゃいいやって思ってた。いつだってササくんを抱きたかった。ふわふわの頭を撫でたかった。その胸に飛び込めたらって思ってた」
口を挟めない佐々木が何か言いたそうな目をしていたが、圭一は気づかないフリで無視をした。「でも」一拍置いて、首を傾ける。ネックレスのチェーンが鎖骨をなぞる。
「もうおしまいだ。ごめんね、ありがとう。大好きです」
深く頭を下げ、圭一は踵を返す。
悲しくなんかない。戻れない道だ。もう女に興味が持てない。仕方ない。とっくの昔にあきらめた。
佐々木が相手では、例えば子どもが3人いる人妻を好きになるより望みがないのはわかっていた。わかっていたけど止められなかった。
夕暮れがまぶしい。
目から涙がこぼれる。傷つくのを覚悟して好きになったはずなのに、どうしてこんなにつらいのだろうか。
----------------------------------------
ガチホモとノンケとその他もろもろでなんかやればいいのに、とか言いながら書いたネタ。このあとガチは友達になぐさめられ、うっかりその人にときめきます。その友達は、何事も挑戦かな、とか少し思えばいい。口にはしないけど^^^
このガチ、ノンケの彼より周りにモテてるといいな^^^本人は興味ないから気づかないけど、ノンケはそんな彼を少し尊敬してればいい^q^
(
2009/03/31)
約束したのは
「トラ」
優しい声で名前を呼び、やわらかい手のひらで頭を撫でる。
好きだった。
どうしようもないぐらい焦がれた。
名前を呼んで、その手をつかんで、「二度と離さない」とか「俺にはお前しかいないんだ」とか、そういうドラマチックなことを言ってみたかった。
「オレおっきくなったら××ちゃんとけっこんするよ!」
「やったー!わたしもトラとけっこんするね」
微笑ましく俺らを見ていた両親、幸せそうに頬ずりをする俺。幼い日の記憶を、何度夢に見れば気がすむのだろうか。
目を開ける。布団の中から腕を出し、カーテンを少し開けた。空を見る。曇天だ。だからこんな夢を見たんだ。くそっ、目覚めが悪い。
携帯で時間を確認して、それから這うように布団から出る。ストーブの電源を入れた瞬間、部屋のドアがノックなしに開いた。
「トラ時間だいじょ、……ぶなわけないよねぇ」
「姉ちゃんさ、ノックしないでドア開けるクセやめなよ」
驚いて目を見開いた俺を無視して姉がドアノブに手をかけたまま笑う。
俺はズボンの中に手を入れて立ち上がり、姉の前に立った。
いつまでも自分より大きいと思っていた姉は、いつから俺より小さくなった?
いつまでも手をつないでいられると思っていたのに、いつから姉はその手を離した?
「そんなんじゃ旦那に嫌われるよ」
「うるさいなぁ。アンタも高校から遅刻癖があると大学で苦労するよ」
あの日の約束が果たされることがないと知ったのはいつだっけ?
優しい声で名前を呼び、やわらかい手のひらで頭を撫でる。
好きだった。
どうしようもないぐらい焦がれた。
名前を呼んで、その手をつかんで、「二度と離さない」とか「俺にはお前しかいないんだ」とか、そういうドラマチックなことを言ってみたかった。
「オレおっきくなったら××ちゃんとけっこんするよ!」
「やったー!わたしもトラとけっこんするね」
微笑ましく俺らを見ていた両親、幸せそうに頬ずりをする俺。幼い日の記憶を、何度夢に見れば気がすむのだろうか。
目を開ける。布団の中から腕を出し、カーテンを少し開けた。空を見る。曇天だ。だからこんな夢を見たんだ。くそっ、目覚めが悪い。
携帯で時間を確認して、それから這うように布団から出る。ストーブの電源を入れた瞬間、部屋のドアがノックなしに開いた。
「トラ時間だいじょ、……ぶなわけないよねぇ」
「姉ちゃんさ、ノックしないでドア開けるクセやめなよ」
驚いて目を見開いた俺を無視して姉がドアノブに手をかけたまま笑う。
俺はズボンの中に手を入れて立ち上がり、姉の前に立った。
いつまでも自分より大きいと思っていた姉は、いつから俺より小さくなった?
いつまでも手をつないでいられると思っていたのに、いつから姉はその手を離した?
「そんなんじゃ旦那に嫌われるよ」
「うるさいなぁ。アンタも高校から遅刻癖があると大学で苦労するよ」
あの日の約束が果たされることがないと知ったのはいつだっけ?