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踏みとどまった思いの行き先
2026/06/21  [PR]
 

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「彼女の写真とかないの?」

 部屋の中を物色していた三宮が振り返る。カウンターキッチンでやかんに水を入れていた小鳥遊は顔を上げ、三宮を見た。やかんをコンロの火にかけ、タオルで手を拭きキッチンを抜ける。
 「ないよ」と、リビングに入りながら答える小鳥遊に三宮は唇をとがらせた。

「ないわけないでしょ。一枚ぐらい、写メぐらいはあるんじゃないの?」
「だって」

 小鳥遊の表情がわずかに曇った。しかし困ったような笑みは一瞬で、すぐにいつもの微笑へ戻る。
 小鳥遊へ背を向けていた三宮は気づかない。だっての続きをおとなしく待つ。
 パソコンデスクの周りには書類や本が積み重なって山を作っている。壁にはコルクボードが下げられ、三宮には理解のできない文字列が並んだメモ紙が画鋲で刺してある中、右上にいい歳の女性と男性が並んで笑っている写真があった。ほかのメモは重なり合って埋もれて見えなくなってしまったものもあるのに、その写真だけはキレイに全面が見えている。
 親の写真は飾るくせに?
 まじまじと二人を見て、どっちかっていうとお母さん似かな、と考えていると、小鳥遊がようやく口を開いた。

「だって、写真見たら三宮くんが好きになっちゃうかもしれないもん」
「そんな美人ならなおさら見たい」

 かかとを回す。後ろで手を組み、三宮が口の端を上げて笑った。こうやって笑うと顔が幼く見え、たいていのお願いは通ることを三宮は知っている。劇団でもたまに使う手口だ。
 だが小鳥遊は首を横に振る。だめ。なんでさ。だから、言ったでしょ。大丈夫大丈夫、オレ好きな人いるし。でもだめ。
 ふふ、と笑う小鳥遊の隣りに座り、三宮がしなをつくる。

「彼女、オレよりかわいいの?」
「当たり前」

 頬を膨らますと小鳥遊の細い指が三宮の髪の中へ滑り込み、ぐしゃぐしゃとかき回してきた。
 声をたてて笑ってる小鳥遊はいつもと変わらないはずなのに、どこか違和感があるのはなぜだろう。じっと目を見て、合う前にそらす。
 気がついた小鳥遊が三宮の頬をつついた。

「なぁに」

 この人、彼女とうまくいってないんだなぁ。思い過ごしだったら失礼だから口には出さないけど、これは絶対だ。
 小鳥遊の薄い胸板に頭突きをしてごまかした。

「なんでもないよ」


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なんもいえない第9弾
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「トラくんトラくん」

 ぐいぐいと後ろからマフラーを引っ張られ、その手を振り払うように大きな動作で振り返る。頭一個分の身長差がある春岡は、俺を見上げ、にこりと微笑む。
 いつだってそうだ。春岡は俺にとってよくないことをするとき、にこりと作った笑みを見せてくる。
 なので反射的に逃げたくなった。俺は頬をひきつらせ、一歩下がる。しかし距離を置く間はなかった。春岡が一歩踏み込み、勢いよく拳を当ててきた。思わず体を曲げ、くの字になる。

「あー、すっきり」
「お前頼むから一回生まれ変わってきて」

 いくら女のパンチとはいえ、無防備な鳩尾に食らえばそれなりの攻撃力になる。じと目で見たが、春岡に申し訳なさそうな空気は微塵も表れない。
 何回かせき込み、体と気持ちを落ち着けると姿勢を正した。そして春岡のつむじを押す。

「便秘になれ!」
「そしたらトラくんに便秘薬買ってきてもらう!」

 歯を食いしばる春岡の顔を見ながら、こんなやつなのにどうして好きだなんだというやつがいるんだろうか。不思議でたまらない。と前に本人に言ったら、春岡は笑って「あたしも不思議。トラくんいい子なのに、みんな怖いっていうよ」と茶色の髪を揺らしていた。
 細い足が、ミニスカートの下でじたばたしている。つむじから手を離し、その足を見る。視線に気づいた春岡がにやにやと笑った。

「なに人の足に見とれてんのさ」
「いや、俺はもっと肉のついたのが好きだから。折れそうなお前の足は好みじゃない」
「黙れ!」

 すねにローキックが入る。座り込みたいほどの衝撃に耐え、そして春岡の頭に手を伸ばした。染色とパーマと日々のドライヤーアイロンコテ等々で痛んだ髪を両サイドからぐっしゃぐしゃにする。
 さすがに春岡が叫んだ。

「ぎゃー!トラくん信じらんない!信じらんない!やだやだやあだあ!」

 ぽかぽかと殴ってくるその腕も細くて、やっぱり俺は健康的で自然体な子の方がいいと思った。
 春岡を好きだなんだというやつの気持ちが、理解できなかった。




 悲しくないといえばウソになるが、悲しいといえばウソくさく聞こえる。だから、櫻庭は悲しいとも悲しくないともいわなかった。彼女に逃げられたという事実だけを端的に伝え、そこに含まれる自身の感情については一切口にしなかった。それを言葉にしたところで現実は変わらないし、みじめな気持ちが増すだけだと思ったからだ。
 その短い話しを聞いた相馬はグラスにささったストローをいじりながら首を傾け、すごく不思議そうに――そう思うのが当然だという顔で――口を開いた。

「しょうちゃんは泣かないの?」
「泣かないだろ。彼女と別れたぐらいで」
「でも好きだったんでしょ?」
「2年付き合うぐらいはね」
「泣かないの?」
「だから」

 視線をそらしてから相馬を見る。真っ直ぐに櫻庭を見ている相馬は、瞳を潤ましていた。櫻庭が口を閉じるのも忘れて目を丸くしていると、彼の頬を涙が伝った。

「そう」

 手を伸ばそうとして、テーブルに手の甲をぶつけた。だせぇ、と内心思う。逃げた彼女も、櫻庭のことをたびたびださいと評価していた。変なところできまらない。テーブルの上のグラスが揺れ、氷がぶつかる音がした。
 相馬は自分の手のひらで涙を拭うと大きく口を開く。瞳は相変わらず潤っているが、顔は笑っている。恥ずかしいね。小さくつぶやいた声に、櫻庭は首を左右に振った。
 彼に話しができてよかったと、思った。


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なんもいえない第8弾。

ファンタジーで今流行りのケータイ小説的純愛物語をやるとしたら、どんな困難が出てくるのかなぁ、と思った。
現代だとありえないということで、種族が違う。妖精と人間とか、竜と人間とか。しかも種族が違うものが交わることを禁忌としてなきゃ意味がない。あと身分が違う。王子と一般人とかね。出会うの大変そうだけど、城を抜け出した王子が乙女に一目惚れ、自分の世話係として召し抱える、と。そうすると、ほかの世話係とか召使いから陰湿な嫌がらせを受けたり、兵士からは「王子といつもやらしいことしてんだろ」と性的な嫌がらせを受けたりするよ!どこのエロ小説だ^^
そんな嫌がらせを受けながらも必死にがんばる乙女の姿に惚れる兵士とか、世話係仲間が出てきて最終的には王子の本妻になるんだろうね。物わかりのいい王様は二人を祝福、めでたしめでたし。が王道なんだろうなぁ。
生き別れの兄弟が隣の国の王子だったりしたら、また一悶着できるよ!隣の国と仲良くなければ「戻ってこい!」といわれ、仲がいいなら「兄弟とか関係ない。オレはお前が好きだ!」と近親相姦を迫られる、と。おもしろい^^
あとは、王子が元同性愛者で、そのときの彼氏が乙女の前に現れる。(だとした場合、王様が祝福してくれる気持ちがより大きくなる。乙女が隣の国の姫だったら国の大小はあっても、一般人ほどの身分の差もなくなるし、仲良くない国同士だったら形だけでも友好の証みたいにもなるし、そうすると話の展開上の無理は少なくなるよね)いっそその彼氏が隣の国の王子(乙女の兄弟)だったら笑えるなぁ。いろんな意味で兄弟になれる。みんな家族\(^ー^)/最低だ。

そんな乙女のシンデレラストーリーはどうなんだろうか。ありがちだな。書いてみたいけど、書ききれる自信がないな。続き物をきちんと書いてみたいな。

「タケダくん」

 廊下を歩いていて、後ろから不意に声をかけられ驚いた。振り返りたくないけど、振り返らないわけにはいかない。今この廊下はオレとオレの後ろにいる彼女以外存在しないからだ。
 ゆっくりと、緩慢な動きで体をひねる。「なに?」尋ねた声が思ったより低くて、自分でもびっくりした。

「なにじゃないよ。こそこそこそこそしちゃってさぁ」

 イライラしているのがよくわかる声で、彼女はそう言った。バレてたか、と心の中で舌を出し、表向きは彼女から目をそらす。
 長い廊下に彼女の歩く音が響き、オレは少しだけ、ほんの少しだけ逃げたくなった。尻込みした。ひるんだ。自分の心臓の音がやけに耳に入ってきて、彼女の足音どころじゃなくなった。
 まっすぐにオレを見てくる彼女の大きな瞳が怖い。

「なんなの? あたしがなにかしたっていうの? それともタケダくんはあたしにやましい気持ちがあるっていうの?」
「や、べつに」
「自分に寄ってくる女が全て自分に惚れると思ったら大間違いだよ、そんなのギャルゲーの世界だけだからね」

 目を丸くする。つばを飲みこむ。半開きになる口に意味を持たそうとなにかしゃべろうとしたが、

「もし、そう思っていたんだとしたら、自意識過剰だよ、タケダくん」

 彼女がそれを許さなかった。


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好きだから、嫌われたくないから、知られたくないから、傷つきたくないから


年内最後の更新!が、こんな内容でいいのか首をひねるところだけど、気にしない(゜∀゜)
よいお年を!
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